ITエンジニアの暗中模索

システム開発やプロジェクトマネジメントに関する雑記

読書「エンジニアリングマネージャーのしごと」

プロジェクトマネージャーという仕事は本当に難しいと思う。技術を追求しコードを書いていてお金を貰えてたときと違って、「人と仕事をする」というのにはテクニックも必要であるし、自分がどんなチームを作っていきたいのかというステージで仕事をすることとなる。

 

プロジェクト関係の書籍は多く何冊も読んできたが、最近のトレンドとも言える1 on 1の方法やギルドの組成など。新しい観点が多く読んでいて終わりを迎えるのが寂しくもなった。新人マネージャーや新しいチームで働く人におすすめの一冊。

 

本書が一貫して伝えてくるメッセージ 

書籍の中で繰り返し述べられているのは、以下である。

「マネージャーのアウトプット = あなたのチームのアウトプット+あなたが影響を与えた他のチームのアウトプット」

  • 自分のチームのアウトプットを最大化していくにはどうすればよいか
  • アウトプットを計測するにはどうすれば良いのか
  • 他のチームにどう影響を出していくのか

いずれも具体的な方法が紹介されている。

特に刺さったポイント

  • 1 on 1でのフィードバックで、最良かつ簡潔なアドバイスは徹底的な本音。受け手に対する過剰な配慮は受けての成長につながらない。摩擦の回避を重視すると良い行いも悪い行いも無視されてしまう。
  • 上司とパフォーマンスについて話をする。上司はマネージャーたる自分にどんなパフォーマンス期待を持っているのかを話をし目線合わせ。これによってチームが成果を上げる基準も明確にできる。1on1は上司に対しても行うものだ。
  • タスクの委譲にはレベルがある。丸投げとマイクロマネジメントの間には段階がある。
  • 委譲するにしても、説明責任と実行責任の二つのうち説明責任はマネージャーたる自分にある。この説明責任を守れない委譲は適切ではない。
  • 個人とチームの成長について、マズローの欲求階層をもとに考え、「自己実現欲求」を叶えていくことを支援する。例えば技術セミナーの参加助成など
  • 他のチームに対してナッジングする。ナッジングとは「他のチームが考えていた意思決定に対して、もっと効果的に決断できるように誘導すること」。誘導というと悪い言葉のように見えるが、良い方向に影響を与えるということである。
  • メンタリングとコーチング。メンタリングの関係は指導的。コーチングの主な焦点は、会話を相手の興味に沿ったものにすること。これによって自分自身で問題を解決できるようになる。
  • 仕事の成果を示す一番普通のやり方は、ステールホルダーに頻繁に状況報告を行うこと。当たり前のことのように読めるが基本原則。これいによって反応やフィードバックを受け双方向であることを意識する
  • スコープ定義の上でタスクにはラベルをつける。「Must」「Should」「Could」「Wan't」。チームが繁忙期になった時に「Must」のみに特化して、「Should」は次のスプリントで対応するなど、チームとしての優先順位づけを見える化する。
  • マネージャーは「他人を通じて仕事をしている。これがマネージャーの仕事である。これが優れたマネージャーの仕事である」

まとめ

本書を通じてマネージャーは「他人を通じて仕事をしている」という意味がよくわかる。現場によくいる工数管理と予算管理だけしているマネージャーには誰しもなりたくないはずだ。他人の力をフルに発揮できるようにするのもマネージャーの仕事であるし、説明責任はたえず自分が持ち丸投げするような弱いマネージャーではあってはいけないと改めて思う。

なお、本書では思考エクササイズも多く紹介されている。チームで読みあわせするのも良さそうだ。